photo essay

VOL.28 雪マークと赤い鳥
2011年1月

 空から舞い降りてきた雪の結晶が窓に張りつき、美しく繊細なその姿を見せている。車の外は零下の世界、外に出て撮影したらカメラごと凍りそうだ。それに、今外に出たら、目の前にいる鳥が逃げてしまうだろう。本当なら、もう少し鳥と距離をとって、ちゃんと三脚を立てて撮影したいのだが、今は無理のようだ。

 雪の花が舞い落ちる、道路脇の草むらには、冬鳥の中でも、人気の赤い鳥、オオマシコが草の実をついばんでいる。贅沢な事なのだけれど、私の500mmレンズだとファインダー一杯で近すぎるのだ。後ろの座席に転がっている、300mmに付け替えればよいのだが鳥が逃げてしまいそうで、そんな余裕がない。

 「これでは鳥が大きすぎるなぁ」などと文句を言いながら撮影を続けていると、遠くの方から車のタイヤが道路をたたく音が聞こえてきた。音はだんだん大きくなり、やがて、私が車を止めた反対側の車線を勢い良く走り去った。オオマシコは、それに驚き飛んでしまった。大抵“いい所”で、起こるいつもの事。道路なので仕方がないし運転している人に罪はないのだか、こういうときはやたら悔しい。

 車を路肩に寄せて、今までオオマシコがいた草むらを諦めきれずに眺めていると、どこかに行ってしまったと思っていたオオマシコは直ぐに草むらに戻ってきた。ここが気に入っているのか、落ち着いた様子で、草の実を食べはじめた。どうやら慌てることはないようだ。車がオオマシコを飛ばした悔しさなどすっかり忘れて、夢中で撮影を再開した。

 雪の降る中に赤い鳥、こんなシチュエーションを楽しむことができる冬の高原は格別だ。だからこの季節になると自然と高原に足が向いてしまう。週末の天気予報に雪マークが付いたらまた来てみよう。今日のように、嬉しい出来事があるかもしれないから。(平成23年1月記)

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