photo essay

VOL.32 森音の伴奏
2011年5月

「コンコンコン」森の中からリズミカルなドラミングの音が聞こえてくる。どこかでキツツキが巣を構えようとしているのだろうか、それとも、朝の食事の最中なのだろうか。早朝の森に「コンコンコン」とドラミングの音が小気味良く響いている。

 音の主に出会えたらいいなと歩を進めていると、今度は元気なセンダイムシクイの声が聞こえてきた。頭上に張り出た枝の上を、行ったり来たり忙しく跳びはねながら、囀りを繰り返している。その姿にレンズを向けていると、視界を大きめの鳥の姿が横切った。鳥が飛んでいった方を見ると、アカゲラの雌が木にしがみついていた。アカゲラは、木をするすると登りながら、時々嘴を幹に叩きつけている。さっきのリズミカルな演奏の主はこのアカゲラなのだろうか。

 春が始まったばかりの森の中はまだ肌寒い。だからなのか、頭が黒い雌のアカゲラは、可愛らしくちょっと膨れている。その姿をファインダーに入れてみると、背景は柔らかな春の森色、膨れたアカゲラは可愛らしく、こういう画はなかなか好みなので、パシャパシャと連写してみた。するとなんとシャッターに合わせるように、アカゲラもコンコンコンとドラミング、まるで伴奏のように奏でてくれた。ほんの少しの間、森の中に、アカゲラのドラミングとシャッター音のコーラスがこだました。

 暫くすると、アカゲラは次々に木を渡り森の奥へ消えていった。今回は、アカゲラとのデュオだったが、次は雄雌とのトリオ、オオアカゲラが参加してのカルテット、小鳥たちのコーラス入りなら…そんな素敵なことがあったらいいなぁと思いながら、アカゲラが飛び去った森の奥をしばらく見つめていた。(平成23年5月記)

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